好きな本のジャンルは?と聞かれたらとりあえず「純文学」と答えるさかなさんですどうもこんにちは!
なんでも読みますけどね、強いて言うなら純文学です。
中村文則氏とか井上荒野氏とか大好きです。
そんな純文学好きのさかなさん、先日感想をあげた今村夏子著「星の子」がとっても良かったので、他にも今村夏子作品が読んでみたくなりまして!

2作目として選んだのはこちら、「むらさきのスカートの女」です。
「なんか前にXで誰かがレビューしてるの見かけて面白そうだった」
というかなりアバウトな理由で選びました。
(なおレビューの内容は忘れた)
タイトルや表紙の印象からなんとなくイヤミスっぽい感じかな?
と想像していたんですが、その予想はまたしても覆されました。
一言で言うなら
「普通の人って、実はみんなちょっとずつおかしいよね」
今村夏子「むらさきのスカートの女」感想
「普通」からずれた視点で見る世界
どんな読後感と感想を持てばいいのか分からない。
これが読み終えて最初に抱いた感想でした。
主人公である「わたし」は、近所に住む「むらさきのスカートの女」のことが気になって仕方ありません。
「わたし」は彼女と友達になりたい一心で、自分と同じ職場で働くようこっそり誘導します。
これがあらすじといえばあらすじなんですが、
あらすじからだけでもなんかちょっと「?」ってなったかなと思うんですが、
主人公は、なんかちょっとずれています。
そんなずれた主人公の視点で語られるからか、読んでる間、なんだかずっと現実味がないんですよね。
ふわふわと地に足がつかないような。
私は何を読んでいるんだろう、
みたいな感覚がずっとあります。
でも決して嫌な感じではなくて。
そのずれた世界から目が離せなくなって、気付けば読み終わっている。
でもやっぱり、読み終わってもどこにも着地した感じがない。
そんなふわふわとした読書体験。
そして、私が読んだものはなんだったんだろう、と改めて考えて、気付きます。
なんだか現実味がないままに読んだこの話、実は相当リアルな「現実」なんじゃないだろうかと。
「普通の人」は、みんなちょっとずつおかしい
この小説に出てくる人たちは、みんなちょっとずつ、
どこかおかしかったり、
しょうもなかったり、
「人としてどうなの」と言われそうなことをこっそりやっていたりします。
でもそれを読んで「こんな人いないよ」とは一切なりません。
むしろ「いるよね、こういう人」の連続です。
それもそのはずで、現実って実際そういうものだと思うんです。
「普通の人」は、みんな本当は、ちょっとずつどこかがおかしい。
この小説はそのことを最初から前提として置いているような気がします。
実は相当リアルな「現実」を書いている、と私が思ったのはそれゆえです。
塚田チーフというデフォルトの人間
そのことを一番如実に表している、誰よりもリアルな「普通の人」だと私が感じたのが、「むらさきのスカートの女」の上司にあたる、塚田チーフです。
新人の緊張をほぐすために、
ちょっと不謹慎な冗談で先輩風を吹かせてしまうところとか。
自分が教えた「ちょっとずるい仕事のやり方」を
「私はあなたが教えた通りにやっただけだ」
と詰められて、否定も肯定もできずに
「そうやって他人のせいにするんだ」
ってぬるっとかわすところとか。
女同士の場では不倫にぼろくそ言うくせに、
男性側の当人の前ではめちゃくちゃ愛想よくふるまっちゃうあの感じとか。
全部、愚かではあるのかもしれないけど、
「人ってそういうところあるよね!なんなら私もあるわ!」
と思わざるを得ない、というか。
それは他の登場人物も同様で、書かれているのはみんな、
「ちょっとおかしいところがストレートに書かれた、ごく普通の人たち」
なんだと思いました。
「かなりおかしい人」が見る、普通の世界
以上を踏まえて、この小説の構造を一言で言うと、こうなります。
どこか少しずつおかしい普通の人たちが
「普通」を取り繕って現実を回している普通の世界を、
かなりおかしい人(語り手)が観察している。
語り手の主人公の視点がずれているからどこか現実味なく見えるけど、
ずれた視点で切り取られたからこそ、普通の人たちのリアルな姿が浮かび上がって見える。
その、「あちら側」と「こちら側」を行ったり来たりするような不思議な感覚もこの小説の魅力の一つだと思います。
ところで、終盤のバザー事件の犯人はやっぱりあの人?
ネタバレというほどではないんですが、終盤の展開に関わるので一応ネタバレワンクッションします。
終盤のバザー事件、あれ結局誰が犯人だと思いますか?
やっぱりあの人?
「バザー事件の犯人」ネタバレワンクッション(タップすると読めます)
終盤の流れを大きく変える事件、ホテルの備品を盗んでバザーに出してたのは、結局誰だったんでしょう?
私は主人公だと思ってます。
主人公のあの異様な準備の良さといい、
子どもたちの「女の人に頼まれた」発言といい、
主人公としか思えないんですが、はっきりとした根拠がないので確証を持てずにいます。
「女の人に頼まれた」発言に関しては、
頼んだのがむらさきのスカートの女なら「〇〇さんに頼まれた」って言うよな~
でもその直前に「子どもたちですらむらさきのスカートの女だと気付かなかった」みたいな描写をわざわざ入れてるんだよな~
子どもたちが気付いてたとて、空気を読んで名前を出さなかった線もあるよな~
となおさら悶々としてます。
あえてここを明言しなかったのも作者の意図なんでしょうね。ぐぬぬ…
みなさんはどう思いますか?
おわりに:普通の人が普通を取り繕う普通の世界
「むらさきのスカートの女」は、前回の「星の子」に続き、
自分の思う「普通」を思いもしない角度から揺さぶってくるような作品でした。
「普通」と「普通じゃない」の境界を漂う感覚が心地よく、またこの世界、今村夏子作品の世界に帰ってきたいと思うような吸引力があります。
ところで、読み終えてから知ったんですが、これ芥川賞受賞作品なんですね!
道理で好きなわけだ、と妙に納得しました。
なんか私、芥川賞作品と相性がいいみたいなんですよね。
全部読んでるわけじゃないですけど、今まで読んだ芥川賞作品は大抵
「これ好き!」
となってます。
今回の「むらさきのスカートの女」もまた、好きな一冊になりました。
今村夏子作品も、他の芥川賞作品も、まだまだいっぱい読んでいきたいです。
どちらもおすすめがあればぜひ教えてください!
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
コメントはXかマシュマロで受け付けています。
▶Xで感想・交流はこちら
▶マシュマロで匿名メッセージはこちら
