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三浦しをん『舟を編む』感想|辞書と「言葉」が好きになる

もう夏休みが終わるのに上の子も下の子も宿題終わってなくて悲鳴あげてるさかなさんですどうもこんにちは!

毎日コツコツやらせてたんだけどなぁ…おかしいなぁ…。

さて、夏休みが終わったら9月になりますね!(関東在住)

秋の夜長に読書を楽しもうということで、今月は読書感想ブログをいっぱいあげようかなと思っております。

そんなわけで今回は勝手に本屋大賞ラリー第3弾、三浦しをんさんの『舟を編む』です。

ネタバレなしです!

目次

三浦しをん『舟を編む』感想

相変わらずお仕事小説がうますぎる

三浦しをん『舟を編む』は、出版社の辞書編集部を舞台に、一冊の辞書が完成するまでを描いた物語です。

読みながら思ったのは、「お仕事小説として抜群に面白い」ということでした。

正直なところ、「人」の話…
つまり人間関係の機微や登場人物の内面の成長なんかをじっくり読みたい人には少し物足りなく感じるかもしれません。

そこはかなりさっぱりしています。

すごく重要そうに始まる主人公の恋愛ですら、

「もうちょっと過程を見せてくれてもいいのに!」

と思ってしまうくらい、あっさりと進んでいきます。

でも、それを差し引いても余りあるくらい、辞書作りの世界そのものが面白い。

どんな苦労があるのか、出版社の中で辞書編集部がどういう立ち位置に置かれていてどういう扱いを受けているのか、などなど…。

「そうなんだ!」の連続で、大いに知的好奇心を刺激されます。

あとがきによれば、作中に出てくるエピソードの数々は本当に辞書業界の「あるある」らしく、

三浦しをんさんの取材力に感服するばかりです。

もともと三浦しをんさんはお仕事小説が上手いイメージがあるんですが、今回も「さすがです!」と唸ってしまいました。

辞書と向き合う人たちから語られる至言たち

今作で胸が熱くなったのは、登場人物たちがそれぞれの形で「辞書にかける想い」に気付いていく過程、
そしてそこで語られる言葉たちでした。

たとえば、辞書の「大渡海」という名前に込められた思い。

「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」

「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。
もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。
もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」

辞書というものの存在理由が、こんなふうに詩的に、それでいて説得力を持って語られます。

香具矢が、辞書づくりに打ち込む馬締から学んだことも印象的でした。

「馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです。
香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがありますが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということです。」

なにかを生みだすためには、言葉がいる。
(中略)
ひとのなかにも、同じような海がある。
そこに言葉という落雷があってはじめて、すべては生まれてくる。
愛も、心も。
言葉によって象られ、昏い海から浮かびあがってくる。

言葉があるから、初めて感情や記憶がかたちを持つ。

私が自分を取り巻くどんな感情も状況も言葉にしてSNSやブログにつづってしまうのは、まさにこのためです。

そこにあるものを確かにつかまえて、大切に留めておきたくて、いつも言葉を探している気がします。

辞書が国や公的機関ではなく、私的な出版社によって作られていることの意味について語られる部分も印象的でした。

「公金が投入されれば、内容に口出しされる可能性もないとは言えないでしょう。
(中略)権威づけと支配の道具として、言葉が位置づけられてしまうおそれもある」

「言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。
また、そうであらねばならない。」

言論統制なんてものもあるように、言葉を縛ることは、心を縛ることです。

心が自由なものでないといけないように、言葉も自由なものでないといけない。

作中の解説によると、海外では辞書は公的機関が編纂することが多く、
日本のように私的な出版社がそれぞれ独自に辞書を出版しているのは珍しいことなんだそうです。

心も言葉も自由であることが守られているというのは、とても尊いことですね。

そしてなんと言っても、終盤の松本先生からの手紙…。

こちらは引用はしませんが、あの一通にこの物語がずっと積み重ねてきたものが凝縮されている気がしました。

おわりに:辞書と「言葉」が好きになる小説

三浦しをん著『舟を編む』は、読み終えると、

辞書だけではなく、「言葉」そのものに対して、誇りとか愛着のようなものを感じるようになります。

そんな至言がたくさん詰まっている小説でした。

最初に「人の話としては物足りない」と書いたんですが、

それはそうなんですけど、でも、

これだけ「人」の描写がさっぱりしているのに、気付けば登場人物一人ひとりのことをしっかり好きになってしまっているんですよね。

この筆力が、やっぱり、さすが三浦しをんさんだなと。

本好きなら間違いなく「刺さる」部分がたくさんあるであろうこの小説、

まだの方は秋の夜長にぜひお手に取ってみてください!

ちなみに、個人的には西岡の不器用な器用さがとても好きでした。

現実にいたら友だちにはなれなそうだけど…(笑)

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この記事を書いた人

元ICU看護師。2児の母(6歳♂9歳♀)
歩くの大好きおでかけ大好き。
でも結構インドア。読書、洋裁、刺繍、ミニチュアキットなど。
最近はPTAもガチってる。
世界を味わい尽くしたくてたまらないので時々変なことします。

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